「第2回 食団連新潟県支部 総会」及び「設立1周年記念式典 基調講演」開催報告 ー 外食産業の声を一つに。食の文化を未来へつなぐ1年、そして次のステージへ ー

このたび、一般社団法人 日本飲食団体連合会(食団連)新潟県支部は、総会ならびに設立1周年記念式典(基調講演)を開催いたしました。ご来場いただいた皆様、賛助会員の皆様、関係者の皆様に心より御礼申し上げます。

本稿では、総会で共有された設立趣旨・初年度の活動と会計報告・今後の方針、そして設立1周年記念式典の基調講演(ゲスト:米田肇氏)の要点を、記録としてまとめてご報告いたします。

開催概要

日時:2026年2月2日(月)
【開場・受付】12:00~
【総会】13:00~
【基調講演】13:45~
【懇親会】15:00~
【閉会】16:30
会場:ホテルイタリア軒 3階 サンマルコ
(〒951-8061 新潟県新潟市中央区西堀通7番町1574)
講師:【基調講演講師】
大阪「HAJIME」オーナーシェフ
食団連本部 理事
米田 肇 氏
主催:食団連 新潟県支部

1. 設立趣旨:
新潟の外食産業の声を“一つ”にして、行政へ届ける

食団連新潟県支部は、新潟県の外食産業の声を束ね、地域の課題を行政へ届け、共に新しいルールを作っていくことを目的として、昨年3月に設立されました。
新潟が誇るのは、食材だけではありません。
食文化・日本酒・職人技・地域の誇り——その総体が新潟の価値であり、私たちはそれを守り、継承し、未来へつなぐ役割を担っています。
設立から1年。私たちは「立ち上げ」を終え、2年目の“実装フェーズ”へ入ります。ここからは、活動の密度と影響力をさらに高め、新潟の外食産業が地域の未来を動かす存在となるよう、皆様と共に歩みを進めてまいります。

2. 初年度の活動報告:
議論で終わらせず、“社会に接続する”一年へ

初年度は、会員同士がつながり、未来を語り合い、課題を言語化し、行政へ届けるまでを「形」にする一年でした。

  • 会員状況(初年度の到達点)
    会員獲得目標:777店舗
    現在:144社 413店舗
    賛助会員:30社

「数は力」ですが、私たちが増やしたいのは“名簿の数”ではありません。
未来を良くする意思のある仲間を増やし、声を束ね、社会に届く強さに変える。これが食団連の組織づくりの本質です。

  • 主な活動(初年度)
    • 定例会・懇親会の開催
      新潟の飲食業界の未来、働き方、採用、人材育成、利益構造などについて議論を深化。
    • 地域創生サミット/行政座談会の開催
      地域課題の共有と、ガストロノミーツーリズムを通じた産業振興の可能性を議論。
    • 新潟市への要望書提出
      現場の声を“要望”として整え、行政へ正式に提出。業界側からの具体的な働きかけを実施。
    • DX・IT化の本質議論
      ただのツール導入ではなく、「何のためのDXか」「現場の価値をどう守り、伸ばすのか」を根本から議論。

3. 会計報告(初年度)

初年度の会計は以下の通り報告され、差引残高は次年度へ繰り越されます。

収入合計:4,368,863円
支出合計:2,923,786円
差引残高:1,444,977円(来年度へ繰越)

この残高は、次年度以降の活動の「燃料」です。
会員・賛助会員の皆様のご支援によって、活動を継続・拡張できる体制が整いつつあります。

4. 今後の活動方針:
3か年計画の“次の一手”へ

初年度を「立ち上げ」とするなら、2年目は拡張と実装です。方針は明確です。

  • 会員・賛助会員の拡大(組織力の強化)
    活動の質を上げる
    支部活動の活性化
    賛助会員メリットの創出(連携価値・実効性)
  • 具体アクション(次年度の挑戦テーマ)
    行政座談会の継続
    新潟2キロ活動への挑戦
    ASPAC世界大会への貢献
  • 支所・エリア活動の強化
    柏崎/長岡/村上/佐渡を中心に、支部活動を強化
    各エリアで勉強会・交流会を開催
    行政連携・地域貢献活動を進め、支所立ち上げを目指す
  • 来期スケジュール(運用)
    2月から毎月1回:勉強会+交流会を開催予定
    詳細はホームページ、LINEオープンチャット等で随時発信
    飲食店の年会費は無料(参加ハードルを下げ、仲間を増やす)

5. 設立1周年記念 基調講演:
外食産業の未来(ゲスト:米田肇 氏)

設立1周年記念式典では、ゲストとして米田肇氏をお迎えし、「外食産業の未来」をテーマに基調講演をいただきました。

6. HAJIMEについて(紹介)

米田氏が率いる HAJIME は、食材・技術・サービスのすべてにおいて“最高水準の体験”を追求しながら、同時に、飲食業界の未来(働き方・育成・待遇) にも真正面から向き合うレストランです。
特徴的なのは、単なる高級業態ではなく、「適正価格で価値を届け、そこで生まれた利益を人材に投資する」という経営哲学を実装している点です。講演では、HAJIMEでの取り組みとして、働き方改革や待遇設計、そして品質維持と技術継承の両立に関するリアルな課題と挑戦が共有されました。
その内容は、新潟の外食産業が次の時代に進むうえで、極めて示唆に富むものとなりました。

7. 食団連設立の原点:
コロナ禍の“署名18万5000通”

米田氏は、2020年のコロナ禍において、飲食店の休業補償を求め18万5000通の署名を集め、政府へ働きかけた経験を語られました。
その中で痛感したのは、「個店の声は届きにくい」という現実です。だからこそ、業界が団結し、声を一つにまとめる団体が必要だと確信し、食団連設立へと至った——。この原点は、新潟県支部の設立趣旨と完全に重なります。

8. 外食産業の現在地:
観光立国の中心は「食」になっている

講演では、日本が観光立国へとシフトする中で、その中心に「食」があることが語られました。2030年に向けインバウンド6000万人という国家目標が掲げられる中、観光消費は拡大し、食関連の消費も大きな比率を占める見込みです。
つまり外食産業は、地域の“余暇産業”ではなく、観光の中核を担う基幹産業になり得る。今まさに、社会からの期待が高まっています。

9. 業界の構造課題:
人手不足・生産性・コスト上昇・デジタル遅れ

一方で、成長を阻む構造課題は明確です。

人手不足
働き方改革による質の低下リスク
職人育成の困難さ
地域格差
古い規制・制度
低生産性/コスト上昇/デジタル対応の遅れ

この課題は、一店舗の努力だけでは突破できません。だからこそ、食団連が掲げる「声を一つにして行政へ届け、行政と共に新しいルールを作る」というミッションが必要になります。

10. 働き方改革と技術継承のジレンマ:
質を落とさず、持続可能にするには

米田氏は、HAJIMEにおいて 完全週休2日制(年間休日約120日)を導入し、働き方改革を推進している実践者です。
その一方で、フランスの週35時間労働制導入後に、手間のかかる料理が敬遠され、既製品の利用が増え、料理全体のレベルが低下したという現象にも触れ、「時間短縮だけを追うと、食文化の質が下がる危険性がある」と警鐘を鳴らされました。
現場では、若手が定時で帰り、料理長が仕込みを背負うことで、“技術が手渡されない構造”が生まれてしまう。これは未来の料理人育成に直結する問題です。

11. 冷凍食品・CK化の進行:
調理技術が消える危機

有名店でさえ、セントラルキッチンの料理を温めて提供するケースが増えています。
効率は上がる。だが、若手が調理を学ぶ機会が減る。
このままでは本物の調理技術を持つ料理人が減り、食文化の土台そのものが弱体化する——。米田氏は強い危機感を示されました。

12. 価格戦略と経営哲学:
適正価格が、待遇と品質を両立させる

米田氏が提示した核心はシンプルです。
「適正価格に上げられない限り、待遇も品質も守れない」。
HAJIMEでは、ディナー価格を89,000円とする高価格戦略によって、初任給31万円など高い待遇と高品質サービスを両立させている事例が紹介されました。
また「満席になったら値上げを検討する」という、実績に基づく値上げサイクルの考え方も共有されました。
“安すぎる日本の飲食価格”を是正し、価値に見合う価格へ。
それは店舗の利益だけでなく、街の文化価値を上げ、地域の未来へ投資する行為でもあります。

13. 海外顧客獲得:
2008年から14言語対応へ

少子化を見据え、米田氏は2008年からウェブサイトの多言語化に着手し、現在は14カ国語に対応。自ら海外からの集客ルートを開拓してきた実践が語られました。
“待つインバウンド”ではなく、“取りにいくインバウンド”。新潟にも必要な発想です。

14. 構造改革の提言:
業界を守るには、制度設計がいる

講演および議論では、「個店努力だけでは限界がある」という前提のもと、制度改革の提言も提示されました。

  • 産業別税制の導入
    雇用と教育コストが重い飲食業の構造に合わせた税制設計が必要。
  • 営業権制度(例:フランス)
    過剰な店舗数・過度な価格競争を抑え、価格と人材の適正化を図る。
  • 雇用数に応じた還元制度
    長期雇用・人材育成を行う経営者にインセンティブが働く仕組み。

そして、食団連の最終構想として掲げられているのが、「食の専門省庁(食産業庁)」です。
“食を基幹産業として国が扱う”ための、政治・行政との接続点をつくる。これが食団連のミッションの延長線上にあります。

15. 最後に:
外食産業の未来は、“参加した人間”が決める

講演の最後に共有されたメッセージは、業界に対するエールであると同時に、覚悟の要請でもありました。
外食産業は、観光の中核です。
地域のコミュニティをつくり、文化を守り、経済を動かす。
にもかかわらず、現場の声が届かなければ、ルールは現場抜きで決まっていく。
だからこそ私たちは、声を一つにして行政へ届け、行政と共に新しいルールをつくる。
そして新潟から、「食の価値」を次の時代のスタンダードへ引き上げていきます。

16. 記念撮影・懇親会

基調講演終了後は、記念撮影ならびに懇親会を開催し、参加者同士が交流を深めました。業界の枠を越えたつながりが、次の一手を生む——その確かな手応えを感じる時間となりました。

17. 今後の案内

2月以降、毎月1回「勉強会+交流会」を開催予定です。
詳細はホームページおよびLINEオープンチャットにて随時ご案内いたします。
飲食店の年会費は無料です。志ある仲間の参加を、心よりお待ちしております。